第47回住宅デー 6月9日(日)
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職人の活躍を動画サイトで配信/知恵と技術で前向き発信

2022年1月3日

 

 深田さんは、自身の出身地である大山崎地域の仕事を中心にしてリフォーム会社を営んでいる乙訓支部の仲

間です。会社のホームページとは別展開で運営する「大工マニュアル」は、YouTubeの動画チャンネルとブログで発信し、大工育成に役立つ大工用の教科書づくりにとりくんでいます(検索「大工育成ブログ・大工マニュアル」)。16歳から大分の伯父の元で修行して23歳の若さで独立。26歳でこだわりの強い大工さんに師事して2度目の弟子入り。

深田さん「大工マニュアル」

その後2度目の独立で現在に至ります。一級建築大工技能士等の大工技術資格に加えて、宅地建物取引士等の資格も取得して知識と技術の習得に努めてきた仲間です。

 

能見さん「㈱能見工務店」

 YouTubeチャンネル「株式会社 能見工務店」では、代表取締役の能見さんが大工技術を解説する「大工塾」や、住まいのお役立ち情報を発信する「教えて太郎さ~ん」シリーズの他にも、ヒデキチこと番頭の高橋さんが担当する「大工のDIYチャンネル」や、左官の涼ちゃんが登場する人気動画などが盛りだくさんで、月曜日と木曜日の毎週2回を基本に発信を続けています。能見工務店は、「手刻みで建てる木組みの家」を押し出してこだわりの建築工事にとりくんできましたが、近年はある気付きから「手刻み」を一番前面に出すアピールポイントから「少し控えめに」と語る能見さん。どのような思いで発信しているのか聞きました。

※両者のチャンネルへはそれぞれの画像から飛べます

 2021年10月に自社のウェブサイトもリニューアルして、質の高い建設技術の提供はもとより、情報発信にも力を入れている能見さんは、YouTubeでの動画発信のとりくみも「その一環」と語り、「動画を見てくれているお客さんに、従業員の顔と人となりを知っていただけるのはとても大きい」と話します。
「大工マニュアル」を運営する深田さんは、所属する乙訓支部で、能見工務店が組合仲間と知り、以前より視聴者として注目して見ていた能見さんと、「一度お会いして話してみたい」と思っていたといいます。
能見さんは、これまでも動画サイトで見ていた「大工マニュアル」の深田さんが京建労の同じ支部所属の仲間だとは知らなかったそうで、「凄い情報を公開しているなぁ」と感心していたのでした。
そんなお二人が、手間も暇も予算もかけて、しかも有料級とも思えるようなプロ向きの動画なども含めた発信をなぜ行うのか、対談をしてもらいました。

建築業界に革命をおこさなあかん

深田さん

深田 長岡の方だなと思って動画を見ていました。墨付けの講習動画を作っておられたのを拝見して、何をきっかけに動画配信されるようになったのかなと興味がありました。
能見 きっかけを遡ると、今の建築業界はこのままではアカンなと、職人が活躍しにくい状況であるとか、住宅メーカー主導の業界になっていくことなどを見ていて「建築業界に革命をおこさなあかん」と言っていたのですよ。しかし、大手のように資金力もないでしょ。コマーシャルが打てる訳でもない。そんな時にYouTubeが身近なものになって、ここは大手とも対等にたたかえるツールだと思ったんですよ。
深田 自分のチャンネルの概要欄に書いていますが、大工が減るという問題があります。
能見 弟子をとってやってきたけれど、育てるのが難しくなってきています。

これからの職人の役に立てれば良い

能見さん

能見 他社と同じことをやっていても駄目だなとの思いもあります。弟子には今までに7人も8人も来ましたが結局残らない。
深田 辞めていってしまうという問題ですね。
能見 弟子を育てたいと思ってもこれでは無理だなと。いっそ動画で配信して、見たい人が見られるようにしたらどうだろうと。動画はずっと残りますから。それが「大工塾」で、自分の思いでやっていますが、会社としては一般向け動画を主に考えています。視聴層は99・6%が男性なので、職人も多く見てくれているのかと思います。
深田 僕の方も、視聴層は圧倒的に男性に偏っています。
能見 これからを担う職人層とか、若い世代に届いているなら良いなぁとは思っています。

すごく稼がないと育てられない

深田 これから大工になる人が減っていくなら、これは資料としても価値のあるものになると思うのです。
能見 ただ自分の技術自慢のような動画をアップしている人がいますが、説明もなく「俺は凄いだろ」と見せたところで、見た人は分からない。それでは意味がない。そんな中で深田さんの動画は、絵も上手、説明も上手い。なるほどなぁと思わされます。
深田 いやいや、僕は作業場も持ってませんから、絵で見てもらうのは苦肉の策だったんです。色々と苦労して作っています。お話を聞いて、僕も建築業界がヤバイという思いがあって、きっかけに共通点があるなと感じました。リフォーム会社を作ったのですが、自分も若い人を育ててみたいと思ってきましたから、具体的に考えてみたら「凄く稼いでお金に余裕がないと育てられないじゃないか…」と思いました。

動画で知ってもらえるのは人柄

能見 真面目なのばかりではだめだと、フリートークする動画を上げていたら意外とそれが視聴される。見てくれているお客さんと打ち合わせしていると「左官は涼ちゃんがきてくれるの?」って聞かれるようになりましたね。ホームページではどのようにでも良く書けるけど、動画は人柄が見えます。
深田 バスの車体広告も出しておられて、YouTubeを見た人がまた、広告を見てと、知ってもらえますね。
能見 動画を見ましたと連絡があって仕事になったのは今のところ1件だけですが、お客さんに協力してもらうアンケートを見たら、こだわって打ち出してきた「手刻みだから」と仕事を依頼する人は少なくて、多くは「人柄」との回答です。
深田 親方目線では、個々のやり方があって、内容を否定されるかもしれません。そんな場合でも教えるたたき台として、参考に使ってもらいたいです。
能見 材料のおさめ方でも自分と違うやり方も知っていて損はない。自分と違っても引き出しがふえるのは良いことですからね。
深田 収益化は微々たるものにしかなりませんが。
能見 収益でははかれない価値がありますよ。

【建築ニュース1196号(2022年1月1日・15日合併号)】

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