

不燃・耐火性に優れ、安易に加工できたことから「奇跡の鉱物」とよばれ、建材として使用されたアスベスト。しかしながらアスベストを含んだ粉じんを吸入・暴露したことから肺がんや中皮腫などの健康被害が続発し、2006年に原則使用禁止となりました。その被害者の多くを占めるのがわれわれ建設従事者です。
史上最大の公害ともいわれるアスベスト被害拡大の最大の責任は、石綿の危険性を知りつつ製造・販売を続け、利益を上げてきた建材製造企業と、企業の利益優先で労働者の健康を守るための規制を行わなかった国にあります。
アスベストの有害性を知りながら使用を義務付けた国と、流通させ続けた建材メーカーを相手どり、2011年6月、アスベスト被害を発症した京建労組合員や遺族が賠償と謝罪を求めて京都地裁に提訴しました。
追加提訴を経て27人の原告団となり、2016年1月、5年7ヵ月の審理を経て判決を迎えました。判決では全国ではじめて、国と建材メーカー両方の責任を認める画期的な勝利となりました。
2018年8月、その1陣訴訟の控訴審で大阪高等裁判所は、建設アスベスト訴訟で史上初めてとなる全員救済の全面勝利判決を言い渡しました。
国や企業の責任を認めただけではなく、今までの判決では「安衛法の範囲外」として救済されなかった一人親方も、「労働者と同様に利益を享受する権利がある」と救済の対象としました。
この全面勝利はまさに原告団と弁護団、そして支援者が一体となって勝ちとった判決でした。
その後続いた大阪・福岡の高裁判決でも一人親方に対する国の責任が認められています。
この訴訟の目的は、原告本人の救済にとどまりません。原告の救済を通じて、今後も拡大する被害の全面救済のための制度、「被害者補償基金制度」を国と建材企業の責任で作らせることです。画期的な京都地裁判決をはじめ、国の責任が10度連続で断罪されていることから、早期救済を求める声が全国に広がっています。京建労の運動で、京都府議会をはじめ、全ての市町村議会で意見書が採択されました。全国でも初めてとなるこの運動到達の陰には、政治信条を超えて「アスベスト被害を無くしたい、被害者を救済したい」と心から願う仲間たちの活躍があります。
私たちの要求に賛同する国会議員は与野党で400人を超えています。判決をテコに政治解決をはかる段階に来ています。「裁判によらず補償を」…国は10度も責任が明確にされたことを真摯に受け止め、一日も早く被害者全員を救済する基金制度を創設すべきです。全面解決へ、引き続き運動を強めましょう。