2022年1月3日
1969年の開校から53年を迎える京建労の職業訓練校「全京都建築高等職業訓練校(以下訓練校)」。長年、指導員をつとめてこられた西山さん(右京)が今期をもって勇退されます。「後進育成」という立場から、建設に従事する若い技能者を情熱をもって見つめてこられました。思い出や後進育成にかけた思いなどを聞きました。
【西山さん】
私の父は一人親方の大工をしていました。訓練生の作文などを見ていてもわかるのですが、子息の場合は父の働く姿を見て憧れを抱く人、またその逆に違う仕事に就こうとする人に分かれます。私は後者であり教師をめざしました。
教育大学に通っていたのですが、事情があって中退に。学部長に今後のことを問われたとき、とっさに「大工になる」とこたえました。とはいえ行くあてもなく、駆け込んだのが京建労でした。京建労は事情を察し、親身になって話を聞いてくれました。就業先や訓練機関を紹介してくれ、それがここの訓練校でした。
8期生として入校し3年間の訓練期間を経て、実家の京北町に戻り父親と一緒に仕事をするようになりました。訓練校の指導員には1996年から参加。当時は生徒が20人ほどいたのですが、夜間講習に参加できない生徒もいて、最終的に卒業は5人ほどでした。
巡り巡って20年後の2016年に、初めての教え子の子息が入校してきたのです。親子2代に大工技術を教えることができたという、とても幸せなできごとがありました。
今の在校生の親方にも訓練校出身の方がおられます。建築大工の現場においてこの「職業訓練」の果たす役割が大きな意味を持つということを、卒業生たちが大切な子弟を訓練校へと送り出してくれることで実感する次第です。
大工技術は学びの形を変えながら、脈々と伝承されてきました。私もその一端を担えたかなと、生徒たちの働く姿を見て思います。この訓練校を育み、見守ってくださった京建労と仲間の皆さんには改めて感謝を申し上げます。
西山さんと同じく、春に指導員を勇退される中井さん(乙訓)にもお話をうかがいました。
【中井さん】
7年間指導員をつとめさせていただきました。座学を中心にお話をいたしました。若い技能者の皆さんは本当に素直で、いやな思いは一つもしませんでした。とてもいい訓練生の皆さんとの出会いがあり、素敵な時間を過ごさせていただきました。
春には3人の2年生が訓練を修了します。送り出してくれた事業主や、職業訓練・大工職への思いをうかがいました。
【遠見さん】
父と一緒に仕事をしています。師匠でもある父には毎水曜日、訓練校に送り出してくれたことに感謝します。
棟上げなど大切な現場作業が重なって休むこともありましたが、2年間通えたことをうれしく思っています。
【加藤さん】
親方も訓練校の卒業生で、建築大工をめざすにあたって、しっかりとした教習機関でいろはを学んでおいたほうがいいと、すすめられ訓練校に入校しました。
実際に通ってみて仕事をしながら、資格取得も含めて建築大工として総合的なスキルアップができるところはありがたく思っています。
試験まであと少しですが精一杯頑張ります。
【谷口さん】
最初のうちにいろんなことを覚えて、現場で通用する大工になるためには、職業訓練は必須だと思います。現場作業しながら関係法規など座学を学んでいくのはなかなか難しいと思うので、親方や先輩方の理解を得ながらここに通えたことを幸せに思っています。
【建築ニュース1196号(2022年1月1日・15日合併号)】