2025年12月3日
取材でお会いした方々の中でも特に印象深い、ジャーナリストの柴野徹夫さん(故人)の言葉を思い出す。友人との会話から「山猫軒」という言葉が記憶の扉を開けた▼柴野さんには、2011年の新年号(966号・見開き平和特集)にも登場いただいた。その際の記事を自分で読み返す▼宮沢賢治の「注文の多い料理店」に登場するレストラン「山猫軒」にちなんだ名を持つ柴野さんの仕事場にて。憲法9条メッセージプロジェクトの編集統括をされていた当時、尖閣諸島沖での漁船衝突事故や北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃など、北東アジア情勢が緊迫した時であった▼氏曰く「連日の報道で9条を押しのけて、戦争準備へと思想誘導されていく。第二次世界大戦後、システム的再編で、挑発行為と、そうせざるを得ない仕組みづくりで戦争が繰り返されてきた。日本で本当の民主主義革命をやろう」▼取材から15年。私たちが守ってきた憲法と、今激しく脅かされている我が国の平和主義。取材後も個人的に幾度もの対話機会をいただいた私。鋭い眼光と、それでいて丁寧な語りの、老骨のジャーナリストはもういないが、あの言葉の生命感が増す。「政府に対して憲法の実行を求める」。(巧)
【建築ニュース1279号(2025年12月15日付)】