2021年5月18日
4月のとある休日、国道十条交差点にある京建労本部駐車場に、77歳になられた一人の組合員さんの姿があった。誰もいない広い駐車場で草引きをされている。私が声をかけると「気になるさかいにな。いつまでできるか分からへん。みんなで頼むで」と笑われた▼随分と暖かく風の強い日だった。大先輩の傍らに咲く、陽にあざやかなタンポポが4輪。すでに茎をのばして、丸く白くなった綿帽子も1つ風に揺れる。強い風にもまだ飛び立つには早い綿帽子に向かって『まだここに居てください』。ご本人に言うには照れくさい▼京建労70周年の2020年度は、静かな中にも確かな足跡を残した。仲間をふやして、各々の「おらが組合」は、困難を乗り越えて、今年度も歴史を紡いだに違いない。今はもう会えなくなった人たちの遺志も、私たちみんなに託されている▼綿帽子の花言葉は「別離」。訃報は唐突であり、一人の書記局仲間が急逝した。彼と共に支部で活動した頃の記憶が蘇る。工事現場を指さして先輩が言う「職人って凄いなぁと思うなら書記を続けたらいい」と。地位向上を訴える建設労働者への、本来的価値への確信のことかと思う。「人の役に立ちたい」と生きぬいた友を忘れない。(巧)
【建築ニュース1183号(2021年6月1日付)】