2019年1月1日
「解体工事中は他の職人さんにほとんど会わないから」と話すのは竹田さん(48・解体)。組合活動では左京支部で財政部長を務める竹田さんは解体工事業「矢組」を営む事業主です。京都府内の建設業仲間なら誰でも加入できる京建労には、多岐にわたる業種の労働者・事業主が加入しています。解体工の仲間をみても342人が加入しています。右京区花園で「矢組」さんが請け負う、二階建て木造家屋の解体現場を訪ねてお話をうかがいました。
秋も深まり木々の色づく頃、大きな敷地を誇る社寺のすぐ脇にある、解体工事の現場に近づくと、行く手には高層階の建造物もなく広い空が広がる印象的な町並みが続きます。
その中でもひときわ景色が開けたように感じられる場所。そこが、すでに住宅の解体工事がすすんだ工事現場でした。
この現場は、竹田さんが営む「矢組」の従業員である鈴木さん(64)と2人で作業にあたって10日目、2人の息のあった作業は遠めに見ていると会話をしているかのようです。俗にいう「阿吽の呼吸」。竹田さんは「お互い何をしようとしているのか、次に何をするのか分かる」と、いたって普通のことのようすです。
竹田さんが解体工になったのは16歳で叔父さんが営む事業所でのことでした。今日のコンビ、鈴木さんとは「32年以上の付き合い」という仲です。
解体工事というと「壊す」という印象を受けますが、「矢組」の作業を見ていると、丁寧に「分解」しているように感じます。実際この現場では施主さんの「古い瓦をできるだけ置いておきたい」との依頼もあって丁寧な作業が続きます。
「この古民家でも、ガラス・畳・木・梁柱・瓦・土・コンクリート・レンガ・石・金属・プラに分別します」と竹田さん。廃棄物処理の重要性が見てとれます。
竹田さんに「仕事のモットーは」と聞くと、「ウチは近隣とのトラブルが無いことで信頼をいただけていると思う」と話します。
組合活動中の優しそうな竹田さんとは別人に感じるほど、現場で撮影した写真はどれも、集中した凛々しい姿が映し出されていて、ここが主戦場なのだと改めて教えられるようです。
また、組合役員もつとめる事業主の竹田さんだけでなく、「矢組」の従業員さんたちは、支部のボウリング大会に参加するなど組合活動にも協力的。
京建労を「ワイワイ楽しい仲間たち」と表現する竹田さんが、「あの時は助かった」とふり返るのが2011年にあった不払いを、元請責任で回収できた経験です。
「何か分からないことがあっても、組合で聞いたら誰かが教えてくれる。助けてくれる」と竹田さん。
くぎ抜きが遊び道具だった少年が、立派な事業主になってがんばっています。
【建築ニュース1136号(2019年1月1日・15日付)】