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踏まれるほどに根を強く【第10回】/57万筆超の署名で風穴あけた

2025年10月6日

2016年1月29日、関西建設アスベスト京都訴訟(1陣)の京都地裁判決は、国とともに、全国で初めて企業の責任を認定する大きな前進を切り開いた判決となりました。判決を受けて京都地裁から駆け出してきた弁護団が「建材メーカーの責任を初めて断罪」の旗を掲げると、仲間たちの大歓声、涙、その中を宣伝カーのマイクを握った酒井書記長(当時)の「国と企業に勝ったぞ! 仲間の力で風穴をあけた」の声が響きました。
京建労は、京都地裁判決にむけ、「アスベスト被害の根絶と全面救済を」と地裁宛てに訴える、「公正判決を求める署名」を中心に据えた活動を展開。2014年の第62回定期大会議案は「組合史上最大規模の運動」と位置付けました。
仲間と家族のつながりを最大限にいかした署名への協力のお願いは、それそのものが世論形成のための活動となり、共に建設アスベスト被害とたたかう全建総連の仲間の協力や、共闘組織からの協力も得て京都地裁宛て署名は57万5807筆(最終)を提出するという歴史的大運動になりました。
2018年8月の大阪高裁判決では、それまでの判例では否認されていた一人親方(個人事業主)に対する国の責任も認める、原告全員救済の画期的な勝利判決を勝ちとりました。大阪高裁宛て「公正判決署名」の最終筆数は55万1050筆にのぼり、「命あるうちの解決を」と訴える被害者・遺族の命がけの訴えを世論に広げる、大きな役割を果たしました。

 

アスベスト労災認定を勝ちとる活動は、「建設労働者の呼吸器疾患は石綿を疑え」の認識を組合内外に広げて、支部窓口や、身近な役員への相談から労災申請につながる事例もふえました。被害の掘りおこし活動では、主治医から「アスベストは関係ない」と言われた仲間の「間質性肺炎」が「石綿肺」であることを認めさせて、労災認定をうけるなどの成果もつくりだしていきました。

また、ばく露当時の同僚を探し、作業実態の証明を得て労災認定を受けるなど、埋もれた被害を見逃さない執念ともいうべき活動でした。
医療機関での所見見逃しが後を絶たない中、京都府保険医協会へ要請を行い、会員である約2500の開業医に「アスベストを疑え!」パンフを送付。また、京都工場保健会から「職業病教育の一環として大変勉強になる」とパンフの追加注文や読影学習会の開催が相談されるなどしました。
2013年5月17日には「アスベスト被害の根絶をめざす京都の会」(略称「アスベスト京都の会」)の結成総会が開かれ、この甚大な公害問題に産業や立場を越えて共闘を広げました。
また、今後の被害をくいとめるための、学習・啓発活動の強化や、電動ファン付き防塵マスクの特価あっせんなども行いました。
署名と同時に執着して活動した、意見書採択運動では、京都府議会をはじめとする京都府内の27地方議会すべてで意見書採択を勝ちとり、国会議員の賛同署名は過半数を超える賛同を得て、「被害者救済基金」の創設、被害者の全面救済へ、仲間のあらゆるつながりをいかした要請行動を展開。「政治解決」への訴えも強めました。
2021年1月、最高裁が国と企業の上告を不受理。国と石綿含有建材製造企業の責任確定。2021年3月25日、京建労会館3階ホールに厚生労働省から3人の担当者が来所し、大臣からの謝罪文を読み上げ原告に対して謝罪。
2021年5月17日、最高裁で東京、神奈川、京都、大阪各1陣で判決。2021年5月18日、菅首相(当時)が国の責任を認め原告と面会。直接謝罪し「早急に和解に向けた基本合意を締結したい」とのべました。最高裁判決を受けて2021年6月、「建設石綿給付金法」が成立。2011年の1陣提訴以来、訴訟の目的であった、訴訟によらずに補償される枠組みを不十分ながら実現。
2022年10月、京都2陣が結審し、全員が国と和解。最高裁での責任確定を受けてもなお、裁判による争いを続ける姿勢を崩さない被告企業を相手どり、京都3陣・京都4陣で追加提訴を行い、企業を相手にした裁判は現在も続き、被害者本人・遺族原告を苦しめ続けています。

【建築ニュース1275号(2025年10月15日付)】

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