2019年7月10日
7月7日のこと、区役所の玄関に笹飾りが揺れていた。今日は七夕、「五色の短冊 わたしが書いた お星様きらきら 空から見てる」と唱歌「たなばたさま」が口をつく。私の前を歩く19歳になった息子の背中を見ると、彼がまだ幼かった頃に短冊に願い事を書いて笹に飾った思い出がよみがえり、私の横を歩くずいぶんと足取りが弱くなった母に目を移すと、胸が熱くなった▼家族で期日前投票に向かった際の光景。区役所内の投票所では「二色の投票用紙」に候補者名と政党名をそれぞれ書き込んだ。今回はまるで願い事を短冊に書いた心持ちと同じく、えんぴつを丁寧に滑らせたのだった▼七夕伝説では、織姫と彦星が恋人だと誤解が広がっているという。機織りと牛飼いの働き者同士だった夫婦が、勤勉さを失い天の川で隔てられたという物語。七夕の日が、労働の尊さを再確認して、夫婦がお互いの勤勉さに感謝する日であっても良いかと思う▼あらためて心に響く「くらしといのち、平和への願いを託す一票を」。この投票行動を放棄するようなことは、実に勿体無く感じる。「五色の短冊」で星に願うのも風情があってよいが、「二色の投票用紙」に願いを込めることには、極めて実際的な力がある。(巧)
【建築ニュース1148号(2019年8月1日付)】