第48回住宅デー 6月8日(日)
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【追跡取材】夏場の過酷実態 京都は異常/現場環境の改善と拡充求めて

2026年1月3日

2025年、京都市の猛暑日は6月から9月の間で61日を計測。観測史上最高を記録した2023年の43日、2024年の54日を大きく上回り、3年連続で記録更新となりました。全国都市別でも京都市の猛暑日日数は最も多く、「京都での暑さ対策」は喫緊の課題といえます。社会問題化する「暑さ」の影響を大きく受けるのが私たち建設業です。屋外はもちろん、屋内であってもエアコンが設置されている就労環境はごくわずかです。夏場の建設現場は建設従事者のいのちの危機が迫っているのです。
 建築ニュース編集部では、過酷を極める就労環境において「働き続けたい」という思いとともに、実態と要求を話しあい、環境の改善と拡充に挑戦している仲間たちを追いました。(文責・川西熟)


「誰か倒れてくれたら、この現場止まるのに…」
記録的な猛暑となった2024年夏、組合窓口でそう漏らしたのは防水工の仲間でした。日陰がない屋上の現場では照りつける太陽のもと、「ふとそう思ってしまった」と語りました。それほど過酷な就労状況だというエピソードのひとつです。
建設従事者なら防水工の仲間がつぶやいたその思いは共感できるはず。近年の夏場の現場は、いのちの危機を感じるほど過酷極まりない状況なのです。
そういった建設従事者の働き方を改善しようと、「熱中症対策会議」が2024年11月と2025年4月に京都中央支部事務所を会場に行われました。
特に第2回は全建総連関西地協大手企業交渉を目前にした開催で、第1回の議論の積み上げを礎に、交渉予定のあるハウスメーカーの現場改善をめざし、「夏場の建設現場で元請にはこうしてほしい」という要求の絞り込みが行われました。

4つの要求 企業に提示する

 ハウスメーカー従事者には一人親方が多いという特性上、どうしても自らの努力で解決する方へと議論が向くときもありました。
あらためてどの現場でも同じ就労条件をめざす視点で、各社ごとでとられている対策の違いを洗い出し、「設備や費用の負担を従事者側に求めない対策」を前提に要求を確認しました。
すべての現場に「①WBGT計測器の設置」「②熱中症対策キットの設置」「③現場内に常時冷えた空間の確保」「④冷えた飲料の補給(ドリンク無料設置やウオーターサーバーの設置など)」を参加者の総意で確認。また「それらを6月から10月の5ヵ月間の設置」もあわせて要求することにしました。
仲間で話しあった要求を携え、5月に行われた大和ハウス工業㈱との交渉に参加した石川豊さん(美装・同社現場にも従事)は、ウオーターサーバーの設置について企業に問いました。

ちゃんと求めることで/働く環境が変わった

企業側は「10年以上前から設置している」と回答。石川さんはあらためて「京都の現場では見たことがない」と実態を追及し、後日「実際は工事責任者への一任で、積極的な設置の推奨だった」と回答がありました。7月に入り現場でもウオーターサーバーの設置が確認されました。
 他の企業も夏場の就労環境に強い問題意識を持っており、「現場からの意見を聞きたい」という企業もありました。私たちの声が生きる情勢であることが、交渉を通じて明らかになりました。
企業交渉の報告と2025年夏の経験を交流する第3回対策会議が10月に行われ、石川さんから「要求することで現場環境が変化した」ことについても報告が行われました。

町場で実践 必要なコスト

また町場で元請にもなる谷口敏さん(大工)はこの間の議論を受けて、「自身の現場でも」と冷えた空間や飲み物の常備を実際にやってみた経験を語り、「費用はかかるけど、入職者確保には必要なコストとして、町場の現場も発注者や住民への理解を求めることが重要」と語りました。

 

 

青年部の「夏場実態調査」/5年前より費用負担重く

コロナ禍の2021年、本部青年部は建設業で働く若者たちの環境を変えるための基礎調査として、家計簿を活用した「夏場の実態調査」を行いました。その中には熱中症対策関連の調査も実施。調査に参加した仲間に5年間の変化について聞きました。

西脇さん

深田さん

「夏場の実態調査」の代表的なものが1日の水分摂取量の記録です。2021年当時で調査協力者の1日平均摂取量は2・43リットル。では現在はどうなのか、当時の調査にも参加した2人に話を聞きました。
西脇さん(型枠大工)は、主に野丁場で働いています。当時は労働者でしたが現在は一人親方として、地場ゼネコンの現場で技をふるっています。
「2025年はいのちの危険を感じた時がありました。調査当時は2リットルの水筒を持って従事していましたが、今はそれでは足りず、水筒は3リットルに。加えて自販機でも1リットル購入するので、平均で4リットルの水分を摂取しています。正直、費用はかさんでいます」と現状を振り返ります。
もう一つの調査は空調服の購入費用です。当時も実費負担が半数近くあり、故障すると生活を圧迫していました。
深田さん(大工)は手間請けで働く一人親方で、主に戸建て新築現場で働く仲間です。深田さんは空調服に関して「夏場はないとやってられないですね。近年は稼働が6月から10月と5年前と比較すると、前後1ヵ月ずつ長くなっています。その分、バッテリーの持ちも悪くなるので、毎年購入するようになってしまいました」と5年前との比較で、大きく負担がふえたと話します。
ただ2人が口をそろえていうのが、「職人の間では酷暑対策が話題になっている」ということです。

今こそ京建労の出番 社会に提言を

西脇さんは「現場で暑さを避けるためにどうするかという話をします。例えば早朝始業・昼過ぎ終業とか。工期や賃金の問題であきらめていたアイデアも、『そうしないと続けられない』となっています。いま声を集めるチャンスかもしれない」と現場の声を語ります。
限界を超える暑さの中で、建設従事者の要求は顕在化しています。あらためて京建労が要求のハブとなり、社会に提言する時が来ているのかもしれません。

【建築ニュース1280号(2026年1月1日・15日付合併号)】

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