写真は全建総連・関西地協発行の「危険な突貫現場から仲間を守れ~大阪万博現場ニュース」を撮影したもの
全国建設労働組合総連合関西地方協議会(全建総連・関西地協)は、関西2府4県の建設技能労働者・職人、約7.2万人を組織している。
大阪・関西万博において、海外パビリオン建設など関連工事の遅れが深刻化する中で、今年7月下旬、日本国際博覧会協会(万博協会)が、2024年4月から始まる建設業界への時間外労働の上限規制を万博工事に適用しないよう政府に要請したと各メディアが報じた。その後、私共の代表も参加したBWI-JAC(国際建設林業労働組合連盟日本協議会)による万博協会に対する要請(8月10日)で、協会側は「協会として要請した事実はない」と回答し、組合側より、今後もそうした要請をしないよう念押しした経緯がある。
しかし今回、「大阪・関西万博推進本部」会合において、一部議員より「超法規的な取り扱いが出来ないのか」「災害だと思えばいい」などの意見が出され、「非常事態であるから、残業時間規制についても必要であれば取っ払うということも考えるべきだという意見は多かった」との報道がされた。
大阪・関西万博では、万博協会が他の国際イベントと同様、「調達コード」を策定し、関連工事従事者の人権や安全衛生についても国際基準での対応を求めている。一方、同様に調達コードを定めた東京2020オリンピック・パラリンピック関連工事では、新国立競技場の工事に従事していた20代の現場監督が長時間労働で過労自死したことなど計4人の死亡を含む重大災害が発生した。私共、全建総連関西地協は、「オリパラの悲劇は繰り返さない」の強い決意のもと、この間も、関連工事に従事する組合員から「熱中症による搬送者が頻発している」との情報を受け、9月5日、万博現場のシャトルバス乗降場において、従事者への注意喚起の街頭宣伝を行ったところである。
また折しも建設業界は深刻な担い手不足に直面し、官民一体となって建設業界の処遇改善と働き方改革を推進している最中であり、私共、労働組合もその一翼を担い奮闘している。
こうした中で出された前述の意見は、「オリパラの悲劇は繰り返さない」の決意や、国や業界の懸命の努力を蹂躙するものであり、断じて看過できない。この意見について、政府は検討を否定したと報道されているが、引き続き、法令遵守の確固たる立場での対応を強く要請する。
一方、工期がひっ迫し、突貫工事となれば、労務管理のしわ寄せは下請けの零細業者に押し付けられる。さらなる重層下請け化や偽装一人親方化が加速する可能性も高い。そうなれば、なし崩し的に現場従事者の労働環境が劣悪化する。こうした事態は何としても避けなければならない。
建設従事者の命と健康を犠牲にして、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとする大阪・関西万博の成功はあり得ない。私たち現場で働く労働者・職人の命と健康、そして人権が守られてこそ成功と言えるものだと考える。全建総連・関西地協はすべての関係機関に対し、現場従事者の命と健康と人権を最優先する冷静な対応を工事完了まで取り続けるよう強く要請する。