大工の腰袋の中に必ず入っているもののひとつにメジャーがある。よくスケールというが、正式にはコンベックスか。ただ、大工の使うメジャーにはミリ目盛りと「寸尺の目盛り」がついている。
この寸目だが図面はミリで書かれているのに何故いまさらと思うかもしれないが、今も日本の建築には寸尺が立派に生きている。例えば日本の建築の基本グリッドである910ミリというのは3尺だし、ベニア板は1800でなく6尺の1820ミリが今も主流。
調べてみると尺貫法はもともと中国から伝わり、日本と同様、今でも使われているそうであるが、中国の1尺は33ミリと日本の尺より3ミリほど長い。他に京都では馴染み深い、呉服などに使われる鯨尺というのもあるが、約1・25倍長い。この尺だが、人の腕にある尺骨という骨の長さに基づいているという。
対するメートルは光が約3億分の1秒に進む距離であるそうだが、なんだか実感がわかない。
1960年に国際条約で日本でも計量単位にメートルを使用することになり、以来図面などはメートル表記に変わったが、今も日本の建築に尺が使われるのは、いちばん人に合った寸法だからであろうか。