

建物だけに限らず、橋でも道路でも一番最初にしなければならない作業が「水盛り」、すなわち水平の基準を出すことである。よく道路工事などで測量士が三脚を立てて何かを覗いているが、あれは水平(レベル)を測っているのである。
最近ではレーザー光線で自動的に水平が出る機器が普及し、ずいぶん楽になったが、水盛りというように、水平はつい最近まで文字通り水を使って出していた。
水盛り管という水の入った底から透明のビニルチューブが数メートル伸びていて、そのチューブの先の水位はどこへ持っていってもバケツの水位と同じという原理を利用して、水平を測る。灯油のポンプも同じ原理である。
それではビニルチューブのなかった時代はどうしていたのだろうかと思い調べてみると、鎌倉時代に描かれた大工の作業風景の絵には、準縄(みずばかり)といわれる長さ1メートルくらいの浅い箱に水を入れて、その水位と平行に縄を張って水平を出している様子が残っている。
どんな最新の高層建築や高速道路も、おおもとのところでは結局、先人の技術が受け継がれているのである。