

最近使わなくなった道具の一つに錐(きり)がある。釘などを打つとき材が割れないように、また硬くて釘が通らないときなどに下穴を開けるのだが、私の見習いの頃などは、原始人が火でも起こさんばかりにぐりぐりと錐で開けたものだ。
またそれより大きな穴を開けるときは「ギムネ」といってドリルの歯にT字の取っ手のついた、ワインのコルク抜きの姉さんのようなもので、これまたぐりぐりと大変であった。それから少し進化して「くりこ」というハンドルを回すドリルが登場して少しは穴開けも楽になった。もちろん電動ドリルもあったが、丁稚が持てるのはくりこ位のものであった。
今ではじゃまなコードもない充電ドリルで数センチの孔でも一瞬にして開いてしまう。また最近では釘よりもビスが主流となり、ますます充電ドライバーが欠かせないものとなっている。ビスも先端がドリル状になっていて自ら孔を開けながら入っていくものもあり、ここ十数年で建築の様式も道具も大きく変化したのはみなさん実感していることであろう。