公共工事の見積もりを作る際の賃金の基準となる設計労務単価は、2023年の京都府では単純平均で前年比6.6%増の26518円。上昇に転じた2012年との比較で55.1%も上がっています。一方、京建労の調査では、労働者賃金で5.1%、一人親方では12.7%の上昇にとどまっています。設計労務単価を引き上げて、収入面で建設労働者の待遇改善をはかる国策が、いまだに現場作業に従事する仲間に届いていない証拠です。
また、強力にすすめられた社会保険加入により、多くの仲間にとって、保険料の原資となる法定福利費の確保が経営上の重い課題となっています。国は、「法定福利費を含まない契約は法令違反」「下請代金から法定福利費などの必要経費を値引くことを不当行為」と強くいましめています。組合としても、このことを仲間に広く知らせ、法定福利費を別枠明示した標準見積書の作成方法などのアドバイスも行っています。元請業者から総額での値引きを迫られているといった仲間の声もまだまだ多く、国が行った調査でも、高次の下請ほど、雇用される労働者の賃金が低い傾向があることが明らかにされました。こうした不公正を許さない運動が必要です。
京建労では現在、組合員の建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録とレベル判定を推奨しています。CCUSの大きな目的は、技能・経験を適切に評価し、経歴・就業日数を記録し、技能を「見える化」すること。そしてその技能に応じた適正な賃金水準を確保することです。業界団体が技能レベルに応じて年収の目安を示しており、いずれも「レベル4」の場合「内装仕上技能者」は年収840万円、「鉄筋技能者」は年収700万円、「とび技能者」は年収800万円などとなっています。
現在、組合員のレベル判定手数料約4000円を補助するキャンペーンを実施中。青年部員には技能者登録料4900円を補助します。ぜひ活用してください。
京建労は現場の実態をつかむとりくみを大切にしています。実践を積み重ねるなかで、仲間どうし同業種のつながりを求めているということ、個々に切り離された状態の中小事業主や一人親方は、上位業者との力関係などで弱い立場に立ちやすい実態や事例があることが明らかになりました。
職種ごとに議論や交流を行うことで、賃金・単価引き上げや法定福利費の一斉請求など、交渉できる建設業界をめざしています。
また、建設現場の労働環境は、一人親方・労働者・事業主も共通の課題です。「現場環境」に焦点をあて、「都心部の駐車場確保問題」や「熱中症対策」、「施設の整備」など労働環境の実態把握と改善要求にとりくんでいます。2022年10月と11月には「現場トイレアンケート」を実施しました。
要求を持ち寄る場として、大手ゼネコンやハウスメーカーの現場で働く「資本従事者の会」を開催。仲間どうし窮状を語りあう中で、改善に向けた連帯を築く場となっています。今後も大手企業や自治体との交渉などに仲間の声を活かし、要求実現につなげていく運動に挑戦し続けます。
京建労は、コロナ禍での現場の新たな課題に向き合いながら、「働き方改革」「資材の不足や高騰」「インボイス対応」といった変革やまぬ建設業界において、様々な相談に対応しています。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入によって、課税・免税問わず、多くの小規模事業者が税負担による経営難に追い込まれる可能性があり、現場に分断が持ちこまれる事態が懸念されています。申請手続きの柔軟化で登録期限が実質2023年9月30日となりました。まずは制度を把握したうえで登録は焦らずに、取引先ともよく話し合って対応する必要があります。
京建労では、消費税率の変更を伴わない増税策であるインボイス制度に反対する運動を強めるとともに、実務面での相談にも応じています。
建設業界における様々な変化の時代にあって、大手主導の技能者囲い込み・系列化による業界再編を許すのか、それとも技能に相応しい適正な賃金の確保・安定した雇用・労働時間短縮などの処遇改善で、働く者にとって希望の持てる業界にしていけるのかの歴史的岐路を迎えています。今こそ正念場、すべての建設労働者や中小事業主が手をとりあい、若者が育つ建設産業にしていきましょう。