

公共工事の見積もりを作る際の賃金の基準となる設計労務単価は、2020年の京都府では単純平均で前年比3.1%増の23952円。上昇に転じた2012年との比較で40.1%も上がっています。一方、京建労の調査では、労働者賃金で5.5%、一人親方では7.3%の上昇にとどまっています。設計労務単価を引き上げて、収入面で建設労働者の待遇改善をはかる国策が、いまだに現場作業に従事する仲間に届いていない証拠です。
また、強力にすすめられた社会保険加入により、多くの仲間にとって、保険料の原資となる法定福利費の確保が経営上の重い課題となっています。国は、「法定福利費を含まない契約は法令違反」「下請代金から法定福利費などの必要経費を値引くことを不当行為」と強くいましめています。組合としても、このことを仲間に広く知らせ、法定福利費を別枠明示した標準見積書の作成方法などのアドバイスも行っています。元請業者から総額での値引きを迫られているといった仲間の声もまだまだ多く、国が行った調査でも、高次の下請ほど、雇用される労働者の賃金が低い傾向があることが明らかにされました。こうした不公正を許さない運動が必要です。
こうしたなか、京建労は現場の実態をつかむ努力と挑戦を続けています。
賃金対策部では、2016年から「職種別のつどい」を毎年開催。職種ごとに議論や交流を行うことで、賃金・単価引き上げ交渉や法定福利費の一斉請求など、仕事環境の改善につながることを目的としています。実践を積み重ねるなかで、仲間同士、同業種のつながりを求めているということ。そして、個々に切り離された状態の中小事業主や一人親方は、上位業者との力関係などで弱い立場に立ちやすい実態や事例があることが明らかになりました。
また、大手建設企業の現場実態も把握しようと、ゼネコン・住販メーカーの現場で働く仲間の声を聴くとりくみも始めました。昨年春の大手企業交渉には、実際の現場経験者が多く参加。すべての企業が「法定福利費は下請まで全額支払われるのが当然」と回答する中、ある大手住販メーカーの現場に従事した仲間から「二次下請への実質未払い」の実態が告発されました。後日、一次下請を通じて全額支払いを獲得するに至り、理不尽な処遇に対する仲間の生の声が、改善を導きよせました。今後も仲間の意見を取り入れながらこれらの挑戦的なとりくみを前進させ、大手企業や自治体との交渉などに活かし、要求実現につなげていく運動が重要です。
一方で、人材確保やこうしたとりくみでの学びを通して、処遇改善の努力を自ら模索し始める仲間もふえてきています。これからは、賃金・労働条件など事業主と労働者の間で利害対立が生まれかねない課題を、一歩一歩解決していかなくてはいけません。労働者も事業主も双方が京建労でつながって、建設業界の昔ながらの悪しき慣習を一緒に変えていく努力が求められています。
近年の京建労は、事業所に所属する組合員の比率が高くなり、新しく加入した仲間の多くが事業所の労働者です。そういった仲間にも、京建労のもつ仲間のつながりの魅力や、くらしや仕事に活かせる制度などをもっと知ってもらおうと、各支部にて「事業所訪問」が行われています。各自が対話を工夫し、訪問活動を重ねていくことで、顔の見える信頼関係が築かれていっています。
様々なとりくみの根幹となっているのは、京建労の代名詞でもある「組合員との対話」です。仲間のつながりを意識し、訪問や会議などで対話を重ね、仲間に訴えていくこと。小さな運動の積み重ねが大きな運動になります。時代は変わっても、私たちの原動力は、仲間のつながりにあります。いま改めて「立場や世代を超えたつながりが私たちの力になる」という確信が仲間のなかに芽生えつつあります。
建設業界における様々な変化の時代にあって、大手主導の技能者囲い込み・系列化による業界再編を許すのか、それとも技能に相応しい適正な賃金の確保・安定した雇用・労働時間短縮などの処遇改善で、働く者にとって希望の持てる業界にしていけるのかの歴史的岐路を迎えています。今こそ正念場、すべての建設労働者や中小事業主が手をとりあい、若者が育つ建設産業にしていきましょう。