2021年3月31日
京建労青年部では2021年2月から「2021年版建設で働く若者のためのいろいろ教えてアンケート」をとりくんでいます。
3月末の段階で3ケタを超える仲間からの回答がありましたので、ここに第1次集約としての結果を掲載します。
なおアンケートはGoogleフォームと用紙による併用で回答を募り、その比率はフォーム8に対し、用紙2でした。
アンケートは基礎項目と14の質問により構成され、1つ目のセクションは「働き方と給料」、2つ目は「生活」、3つ目は「仕事について」、4つ目は「青年部やコロナ」について回答を求めています。
アンケート回答者の就労形態では5つのカテゴリでの回答を求めました。
①職人・従業員 ②一人親方(手間請中心) ③一人親方(請負中心) ④個人事業主 ⑤法人役員
①職人・従業員はいわゆる労働者に分類される仲間で、②一人親方(手間請中心)は請負はせず、材料などは持たず、1日単価での請負形態で就労する形態の仲間をさします。また③一人親方(請負中心)は前者とは別に平米や坪単価など、単価計算での個人請負をする就労形態で、比較的自由度の高い働き方をさします。③個人事業主は労働者がいたり、請負での収入を得る経営者をさします。
アンケートの回答者比率は①が36%、②31%、③が7%、④が15%、⑤が11%でした。より労働者性の高い就労形態の仲間が若年層には多いことを裏付けています。
回答者の年齢と経験年数では、最も若い仲間で19歳、いちばん年長で44歳が回答。平均年齢は30.79歳で、平均経験年数は9.75年でした。
階層別で年齢と経験年数を並べた分布図(上記)では、①職人・従業員と②一人親方(手間請中心)といった労働者性の強い仲間は双方とも低い年数に集中しています。また特徴的なのが、非常に若年かつ経験年数が浅いエリアで②の仲間が集団でいることです。社保未加入問題の中で浮き彫りになった「若年層の一人親方化」「偽装請負化」が垣間見える結果です。
また①は全体に分布している中で、④や⑤は30代で多く形成されています。③は世代内で経験年数が高い仲間がその就労形態であるのもわかります。
毎日働く現場について、どのような請負環境のもとで働いているか聞いた部門では、上記のような結果になりました。複数回答可として回答を求めたもので、半数以上の仲間が地元工務店などからの下請け環境での仕事(町場)と回答。その他と答えた仲間には、工務店の元請け仕事などが多く含まれます。
毎日の平均的な出勤時間については、75%が7時より前に出勤しており、遅くても8時には現場に向かっている実態がわかりました。働く場所(現場)が毎回違う建設業特有のもので、朝礼など早朝から行われる関係上、早朝出勤が当然となっている現状です。
平均的な帰宅時間を問うた項目では、63%が7時以降の帰宅となっています。前回のアンケートより帰宅時間の平均が下がっているのも特徴で、推測ですが仕事がある時にある近い現場の仕事になっているのもうかがえます。また野丁場などは提示での閉所も徹底されている可能性もあります。
青年部独自で出勤と帰宅間の時間から通勤時間の推測として2時間を引いた「就労時間(拘束時間)」を算出しました。最短で8時間、最長では14時間の仲間もいました。平均では10.18時間で8時間の労働を2時間以上も超過しています。また8時間となった仲間はわずか6%であり休憩時間とのかかわりはありますが、94%以上が8時間以上の就労となっています。なお10時間以上就労している仲間は63%と高水準で、下記の休憩時間、休日と合わせて非常に厳しい状況で働かされている実情が明らかになりました。
1日の休憩時間では2時間と答えた仲間が45%で、10時に30分、昼休憩が1時間、3時に30分という一般的な休憩時間が割り当てられていることが予測できます。なおなし(0分)と答えた仲間も5%いたことも重要な要素と言えます。
建設業ではさまざまな給料形態がとられており、階層によって大きく変化します。従来、職人層では日給月給という日当×就労日数を月まとめで受け取る形と、固定給で受け取る月給制(役員報酬含む)、単価や売り上げなど出来高で決まるものなどがあります。①や②の働き方の仲間の多くは日当による収入が多い中で、法人化や働き方改革などの影響もあり、月給制に移行している状況もあります。3割を超える仲間が月給・固定給となったことは注目課題で、今後の動向を見守る必要があります。
残業代については33%が支給されていると答え、31%が支給されていないと回答しています。支給されていない割合の高さも注目点ですが、出来高または役員報酬なので無いと答えた仲間が33%に上ることです。上記の給料形態の回答で「出来高」と答えた仲間よりも11%も高く、矛盾が生じています。これは「日当でいくら」という就労形態や、②のような偽装請負に近い「一人親方(手間請)」のため、日当と認識しておきながら、自営業という感覚が招いたものであると予測されます。引き続き、研究調査が必要ですが、他産業と違う「玉虫色の働き方」弊害がこの設問で正面化したことは間違いありません。
月給換算での収入について問うたところでは、62%が35万円以下でした。建設業の多くが月給だけでボーナスなどの一時金は支給されていません。また上記のように日当×就労日数が給料となりますので、雨や現場の段取りの関係で待機となった場合は収入減となります。そういった状況からかんがみると、半数以上の若年技能者が400万円以下の年収で働いている現状が明らかになりました。多くの場合は年功制度はありませんので、このままベテランへと推移する現状です。
回答者の給料額を就労時間(休憩時間を引いたもの)で割り、時給を算出。時給と年齢と階層に分けた分布図を作成しました。時給額で言えば京都の最低賃金909円を下回る仲間は20%にものぼりました。その多くが①の労働者層で次いで多いのが②である一人親方(手間請)です。①と②の仲間が年齢に限らず低賃金であり、30代が多い③の仲間は賃金換算だと高水準にあることがわかります。また④と⑤の事業主層は高低の賃金差が激しいのもわかります。
①や②が低賃金である理由は、給料の安さとともに拘束時間の長さも計算上影響が出ているのも特徴的で、「使われる側」の就労環境の格差も大きく作用していると思われます。
今の給料について満足しているかを問うた項目では、72%が満足していないと回答しました。低賃金、長時間拘束、手当なしなど就労内容に見合った賃金が支払われていないという現状が明らかになりました。それは対事業主との関係だけではなく、産業自体への現場従事者への評価の低さとともに、社会が見る建設従事者・技能従事者の評価の低さが招いた実態であるといえます。
今後運動点では、満足していないという部分の解明と、どこに満足していないのか、何が足りないのかを模索していくことで要求活動・組織化へとつなげていく必要性があります。