2022年1月3日
京都府北部の舞鶴市・福知山市・宮津市・与謝野町にまたがる大江山に、自身の所有地である山を拓(ひら)いて道をつくり、再生した古民家を中心に人生を謳歌する。そんな言葉がぴったりな仲間がいます。宮津支部所属の三冨さん(72・大工)は、「年齢なんか関係ない。気にもしてない」と、力強い声で笑います。
「アーチェリー場を作った仲間がいる」と聞いたのをきっかけにして取材に行きました。
山間部の府道から入り、自動車ですすむのをためらう程の急な坂道を上ると、「湯乃山庵」と書かれた木製の看板が目に入ります。ここは古民家を再生した、三冨さんの「オモロイ」を集めた場所。
竈(かまど)あり、囲炉裏(いろり)あり、薪ストーブあり、自作のピザ窯まであります。
三冨さんが以前から所有する山に、解体工事で出る古材などを利用して長年かけて作られてきたスペースです。
三冨さんに案内されて坂を上り、完成した茶室へ向かうと、両側から水の音が聞こえて両サイドに川があることに気づきます。三冨さんは「ここはつまり尾根に作ってる。上へ行くと海が見える」と教えてくれました。
山を拓くと一言でいっても、道を作るだけでも一筋縄ではいきません、木を切って道らしき空間を作ったところで、大雨が降ればドロドロの土が流れるだけの場所になります。
入り口の急な坂から上は全部、三冨さんが要所要所に石材を配置して大量の砂を敷いて作った「道」です。
「水の音はええやろ、人間の原点や。火はええやろ、それも原点や」と、自然の中に身を置いて、人間が知恵と工夫を発揮して活動することの意味深さを語ります。
「簡単にできないから、どうしたらできるか考えて工夫するのがええ。それで子どもも、大人も、ここへ来て火で肉焼いて食べたら最高に楽しいのや」と、教えてくれました。
今も石積みを行ったり、山を登る道を延長させているところです。三冨さんは「海が見える場所まで道は作りたい」と言います。
趣味になったアーチェリーは、「テレビで見てオモロそうやったから」と、自分が良いと思ったものは積極的に手を出してやってみる三冨さん。「老いて益々」ではなく、年齢を感じさせない元気とバイタリティーの持ち主です。
【三冨さん】
昔はなぁ、医者より大工の方が偉かったんやって、当たり前やろ。人を健康で安全な家に住まわすのが大事なことやからや。医者は痛んだ時だけやろ。今の職人はなぁ、もっと、自分らに自信もって生きなあかん。自信もって仕事せないかん。自信と誇りをよ。
【建築ニュース1196号(2022年1月1月・15日合併号)】