大きな音たて風に揺れる
とくに思い出深いのは、1986年に再興した清水寺の三重塔である。材にはケヤキを使っている。原木は四国に多いが、大きな部材が取れる大木は少なくなった。この木は堅く、風化に強いので、大寺院の建築にはケヤキが、方丈(ほうじょう-住職の居所)などにはヒノキが使われることが多い。
さて、清水の塔だが、とくに苦心したのは塔心(心柱。塔の中心をなす)の立ち上げであった。尺五寸角のケヤキ材を3本継ぎ、てっぺんからいちばん下までを厚くて長い4枚の鉄板で鋲打ちした大きなものだったので、おさまりが大変だった。
塔の各層では塔芯を取り囲むように組まれた四角い枠が佐義長柱で支えられているが、枠と心柱との隙間はどこも一寸にしなければならない。ケヤキという木は素性が荒く、よく捻じれるので、合わせるのにひと苦労だった。
また塔というのは、よく振れる建物である。実際に寺の和尚様は「風が吹くごとにゴーン、ゴーンと、大きな音を立てて揺れよる」と塔芯が枠にぶつかってうねっている様子を話しておられた。
塔芯の最頂部は丸く削りだし、これに相輪が施されるのである。相輪とは、塔の最上層の屋頂に載せる装飾物で、インドの仏塔(ストゥーパ)に起源するとされる。金属製のものが多く、この塔の相輪も銅製の鋳物である。
ちなみに、清水の塔の古い宝珠(相輪の最頂部)の中には、人の頭髪が入っていたが、これが何を意味しているのかはわからない。
興味深かった継ぎ手の墨書
塔に限らず、文化財を解体すると、古い時代の大工が書き付けたと思われる墨書を発見することがある。その多くは、斗(ます)内側の肘木を受ける広い部分であったり、枘の狭い部分であったりだが、組んでしまえば、もう外からは見ることができない。
建築に当たった大工の名や年号などが大方だが、中には明らかに落書きとわかるものもある。「米一升、銀○○分」「日当○○分」など、当時の大工手間の様子をうかがうことができる墨書などもあり、興味深い。
実は私(細川)も、再興した清水の塔の一部に墨書をしてある。いずれこの塔が朽ちてきて、解体修理がされる日までは、目に触れられることはないだろう。(つづく)
