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政策キーマンが語る建設業界の未来/蟹澤氏 大講演会

2019年2月6日

 建設キャリアアップシステム(以下CCUS)の本格運用を4月に控え、全国で技能者・事業者とも登録がすすんでいます。加えて「人材不足」「処遇改善」「外国人技能実習生」など建設産業は今、大きな変化の中にあります。
 国の審議会などで会長・座長をつとめ、近年の建設産業政策の立案・推進のキーマンでもある蟹澤宏剛さんを京都に招き、業界は今後どのような舵きりが行われていくのかをテーマに講演が行われました。

 講演会の冒頭に蟹澤さんは、アメリカの建設現場の実態を紹介。午後3時30分には閑散とする現場の写真を見せながら「アメリカの技能者は基本的に残業はしません。あさ早くから作業を開始し、所定労働時間に退所する。雇用側も残業させると割増賃金を払わなくてはならないから、退所してもらったほうがいいという関係性が確立している」と話します。
続けて「そこには労働者を派遣するユニオン(組合)の存在が大きく、ユニオンが数年間の人材育成プログラムを持って技能者づくりをしている。日本の徒弟制のように『見て学べ』や『師匠が絶対』という原理はもちろんありません。厳しいカリキュラムに半分以上が技能者になるまでに脱落する。『建設技能者』と名乗れるには道のりがあり、たどりつければそれなりの待遇があるのがアメリカの建設現場です。ですので年収1000万円の技能者もざらにいます。日本の労働組合や業界団体がこれからどうするべきか。建設技能者が激しく減りゆく中で現状を正しく理解し、方策を実践していく必要があるわけです」と日米の技能者の違いから、日本の建設業界の実情まで詳しく解説しました。
続けて蟹澤さんは実態調査から見えてきた現状を解説します。
「工務店に関する調査で、後継者の有無をたずねた項目では、3分の2の工務店が今の代で閉店になってしまうと回答しています。また1000人の職長に聞いたアンケートでは、9割の人がやりがいを感じています。しかし賃金では半分は満足していません。そして9割の人が子どもにはこの仕事は勧められないと回答しています。安いし不安定で休みも無いこの仕事はやらせたくないというのが技能者の本音です」とリアルな実態に参加者もしきりにメモを取っていました。
また蟹澤さんは労働力を補完する存在として外国人技能実習生が建設現場でふえてきている現状について、「日本の最低賃金が他国より低い現状で、これから外国人が実習先に日本を選択するでしょうか。他国の方が条件はいいですから、国がいくら入国制度を緩和してもそう簡単には来てくれないと思います」と技能実習制度の未来も暗示します。
担い手不足の厳しい未来が予測される中で、蟹澤さんが光明としてあげるのがCCUSです。「情報が蓄積されるという点で、CCUSを入退場管理のシステムととらえておられる方も多いかもしれませんが、もっと大切な役割があるんです。それはその人を『建設従事者』として証明するシステムという点です。諸外国では当たり前なんですが、誰でも彼でもなれる建設従事者ではなく、『自称』との区別をはかり職種の認定を行います。また正当な能力を評価し資格や受講状況を登録できれば、必ず建設従事者の地位は向上し、入職者も確保することができます。そのためにはCCUSを一定の時間をかけて定着させることが非常に大切なのです」と力説します。
最後に蟹澤さんは「やはり労働組合であれば労働者をしっかり組織し、仲間に価値をつけて交渉し、現場に送り出すことが重要です。日建連も全建総連もCCUSを成功させるために本気で活動をすすめています。業界の未来のために、皆さんの活躍を期待します」と締めくくりました。

【建築ニュース1137号(2019年2月1日・15日付合併号)】

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