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「学び」の現場に集う若手技能者/仁王門新築工事に見た棟梁の心

2020年1月2日

 2020年、京建労は70周年を迎えます。京都で建設職人と家族の、仕事やいのちを守りあってきた仲間たち。建設産業の変化とともに、従来の組合活動にくわえて建設業界の専門技術者集団としての役割にも注目と期待が集まります。守り継承し、さらに発展をめざす最たるものとして「技術の伝達」を実践されている、棟梁・中島さん(68・京都中央)を仁王門新築工事の現場に訪ね取材しました。

「穏やかに真剣に」 見つめるその先

 「工事中の仁王門で、『三手先』とよばれる、軒の重さを支える斗栱(ときょう)で用いる組物が見られる」との情報をいただいて取材に向かいました。
現場に到着すると、足場とメッシュシートごしに見ても迫力を感じる建立中の仁王門が見えます。
開けた空をバックに見上げる、まだ屋根もかかっておらず、もちろん阿吽の仁王像も安置されていないのに、感嘆の声がもれる存在感です。
メッシュシートと空の間から職人さんたちの作業する音が聞こえ、足場ステップを上って現場に入ると、棟梁の中島さんが笑顔で迎えてくれました。
「三手先」をはじめ、多くの組物の説明を聞きながら拝見していると、高度な技術の集積した細部に、また感嘆の声がもれてしまいます。
中島さんは「習いたいなら、いくらでも教えてやるよ」と、そう言いながら工事に参加している若い職人さんたちに、「穏やかに真剣に」、そんな視線を向けました。

つながりが技をつなぐ 若手、建築大工 現場と時間を共有

 宮大工としてさまざまな社寺、文化財にかかわってきた中島さん。その技術について先輩たちから受け継ぎ、そして伝えてゆく立場として、建築大工や若い技能者とのかかわりを続けています。
中島さんは社寺に関する仕事について「特別ではない」と語ります。「伝統的な技術であることには違いないと思いますが、その時代に適応して変化してきたのが社寺建築だと思います。自分のアイデアも存分に生かすことができるんです」と強調します。
実際、仁王門の建設でも「見えるところはしっかり研究し、復元に全力を尽くす。屋根裏や基礎など現代の法律にのっとってやらなければならない部分などは、金物などを使いながら今の技術で全力を出す。伝統技術だけではないんです」と解説してくれました。
今回の仁王門新築では、奥丹後支部の大柳さん(55)も技能者として参加しました。中島さんも「大柳君たちのように技術を持った建築大工とかかわりを持てることが、この仕事をやっている喜びのひとつ」と、建設業の魅力を次のように語ってくれました。
「大きな仕事は応援という形でさまざまな建築大工の力を借ります。もともと教えていた弟子なども今回の現場では助けてくれました。同じ技能者とつながる楽しさは何ものにも代え難いものです。私にできることは、現場を通じて技術を渡していくことぐらいですが」と笑顔を見せます。
大柳さんの息子・潤太さん(23)も大柳さんとともに「刻み仕事」の分野でかかわりました。中島さんは若い技能者について「潤太君に加え、工務店にも20代の宮大工が2人いて、日々技術を磨いています。『今の若い子は』なんてよく言いますが、確かに自分が丁稚のころからしたら頼りなく感じるところがあるかもしれません。ですが彼らのことをよく観察してみると、スマホなどを活用しながら知識を仕入れたり映像から復習したり、仲間でつながったりして、ものすごい勢いで吸収し成長しています。私たちのころに比べたら伸びるスピードも早い。必死になって頑張っていると思いますよ。私のできないことも率先してやってくれる。彼らとは五分五分です。ただもうちょっと積極的に質問してくれるとうれしいかな」と笑います。
 出張仕事が多い中、最近の楽しみは「孫と一緒にいること」と話す中島さん。小学生の兄弟が中島さんの活躍を見て「おじいちゃんのような宮大工になりたい」と言ってくれるようになったそうです。
「孫たちが現場に出るころには私はもう引退しているかもしれない。だけど多くの人たちとかかわり、つないでいけば技術は必ず残っていく。私はそう信じています」と次代の仲間に期待を寄せていました。

【建築ニュース1157号(2020年1月1日・15日合併号)】

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